あけましておめでとうございます

「白哉様」
 柔らかな女性の声が男の耳を擽る。顔を上げると白を基調とした着物を纏う彼女の姿が目に入る。正月の祝いにと白哉が数ヶ月前から準備していた着物である。決して派手では無い金糸と銀糸で縫われた装飾が緋真の上品さを際立たせており、静かに彼は微笑を浮かべた。
「緋真、良く似合っている」
「有難うございます」
 仄かに頬を赤らめて礼を言う緋真の黒髪に手を伸ばす。幾度か優しく撫でるとはにかんだような笑みを浮かべ、緋真はその手に触れた。
「白哉様、明けましておめでとうございます。今年もお怪我が無いよう、お祈りしております」
 改めて言われた言葉に照れくさくなったのだろう。普段より感情を面に出しそうになるのを隠すように、緋真の華奢な身体を抱き締めた。
「びゃ…」
「緋真」
 それ以上の言葉を紡ぐのを遮るように耳元で囁くと、そっと彼女は胸板に顔を埋めた。
「おめでとう。今年はお前が健康で過ごせるように。それから…お前の大事な妹が見付かるように、祈っている。もし見付かったら…この家に住まわせ、後ろ盾が無くては哀れであろう、私の妹として向かい入れても構わない」
 この場には居ない小さな妹の姿が脳裏に浮かんだのだろう。ありがとうございます、とか細い声で返して小さく肩を震わせ始めた緋真の身体をもう一度しっかりと抱き締めて、白哉も微かに笑みを浮かべた。

拍手用に書いたのですが…日付が変わってしまったので此方にUP。
2009.01.02