ルルーシュ誕生日

『C.C.…』
 いつものように暇を持て余しながら雑誌を捲っていた彼女の意識を、不意に女の声が遮った。普段から大した用も無いだろうに、語り掛けてくる故人の声。騎士候の身分からブリタニア皇帝に寵愛されるまでに至った女性。そして、C.C.が契約を結んだルルーシュの実母。
「何か用か、マリアンヌ?」
 そして、その彼女の息子は今は大人しく学校で学業に勤しんでいる事だろう。既に時計は昼を差している。
『えぇ。貴女が用も無いのに話し掛けるなと言ったから、今日は話を用意して来たわ』
「そうか、それは良い事だ。それで用件は?」
『今日はね、…あの子の誕生日なの』
 ふと。C.C.が雑誌の頁を捲る手を止めた。そういえば、今朝はいつものように惰眠を貪る自分に今日くらいは起きろとか何とかと叫んでいた気がする。勿論そんな抗議は黙殺したが。
『後で祝ってやってくれないかしら。それから私からも、おめでとうって』
「お前と私が会話出来ると知ったら、色々面倒な事になる」
 昔、幼い子供と生活を共にした事があったから、母性というものは理解出来た。
「後者は却下だ。…だが、祝ってやるくらいなら構わない」
 だからこそ、可能な範囲の中で祝ってやりたいと思った。意識の中で女が安堵の吐息を零す。
『…ありがとう』
「礼など不必要だ。…たまには良いだろう、共犯者という枠を緩めてみるのも」
 お互い素直にはなれない性質だからこそ、こんな日くらいは。微かに口元に笑みを浮かべ、何をしようかと少女は思考を巡らせ始めた。

一年前のルルーシュ誕生日の際に書いたもの。
クローム誕生日と重なっていてすっかり忘れていた為、とっても短いです…。